岡山の現代版画界において、かけがえのない存在であった永岡博が逝ってから、一年余の短い準備期間で遺作展の開催が実現できたということは、遺族の方はもとより、常に一番身近かな所にいた岡本正教氏の尽力に負う所が大きい。
遺作展は、銅版画家永岡博の画業の変遷を展望できるよう、生涯の作品を最晩年から初期まで、制作年を逆上りながら展示した。結果遺作展は、版画の世界に殉じた彼の真撃な生きざまを伝え、多くの来場者に感銘を与えるものとなった。ここに永岡博の遺作展開催にご理解を頂き、展観の機会を設けて下さった天神山文化プラザ天プラ・セレクション実行委員会に対して、深甚の感謝を申し上げたい。
私は、画家の仕事は作品を通してその時代の証言として語り次がれ、決して風化しないものだと信じているが、それでも時間と共に少しずつ鮮明さを失うようにも思われる。
遺作展に平行して、ご遺族の尽力で遺画集が出版され、彼の生きた証を後世に残せたことは、なににも増して喜ばしい。語り次ぐのは残された者の務めなのだから…
香川昌久
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.15 永岡博 遺作展 銅版画の世界
[会期]2008年7月1日〜7月6日
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3・4展示室
永岡博
1937 岡山市に生まれる
1955 岡山県立岡山操山高等学校卒業、岡山大学教育学部特設美術科入学
1957 第10回日本アンデパンダン展/東京
1957 前衛美術協会15人展/岡山
1958 第6回ニッポン展
1959 岡山大学卒業、公立中学校教師として1997年まで勤務
1960 第14回前衛美術展(東京)第17回まで
1960 前衛美術展/岡山
1964 アンデパンダン'64展/東京
1965 東京芸術柱展/東京
1966 東京芸術会議展/東京
1966 個展/岡山
1967 第1回岡山アンデパンダン展主宰(岡山)第3回展まで
1967 ヒロシマ幻想展/広島
1969 銅版画制作を始める
1970 第1回齣展(東京)第38回展まで
1970 個展「沈黙への招待」/落合
1973 個展/岡山
1973 4人展/岡山
1973 彫塑二人と版画三人展/岡山
1974 個展/岡山
1975 個展/倉敷
1976 第4回汎瀬戸内現代美術展(岡山) 第8回展まで
1976 七人展(岡山) 1999年まで
1977 個展/東京
1985 個展「水彩画の世界」/落合
1989 個展/岡山
1990 「岡山の美術・現代作家の眼」展/岡山
1991 個展/岡山
1999 アートウェーブ岡山巡回展「広がる版画の世界」/岡山
1999 フォトエッチング制作を始める
2002 個展「works of photo etching」/岡山
2005 個展/岡山
2006 七人展を再開
2007 3月 70歳で歿
2008 遺作展/岡山県天神山文化プラザ
出品一覧
タイトル|素材/表現方法|サイズ(cm)|制作年
仮面Ⅰ|紙に銅版画|29×22|1969
仮面Ⅱ|紙に銅版画|38×29.5|1969
ヘルメット|紙に銅版画|36×23.5|1969
目のある風景|紙に銅版画|37.5×25.5|1970
嶽Ⅰ|紙に銅版画|53×37|1970
題不明|紙に銅版画|37×53|1970
嶽Ⅱ|紙に銅版画|34.5×25.5|1971
嶽Ⅳ (差し入れ)|紙に銅版画|37×22|1971
窓|紙に銅版画|37×53|1972
並木|紙に銅版画|37×53|1972
シャムⅡ|紙に銅版画|25.5×19.5|1972
壁|紙に銅版画|34.5×16.5|1973
位相|紙に銅版画|24.5×14.5|1973
転位する街|紙に銅版画|32×54|1973
解体の兆|紙に銅版画|53.5×32.5|1974
砂の男|紙に銅版画|32×53|1974
輪の遊び|紙に銅版画|49×71|1975
reversionⅡ|紙に銅版画|49×79|1975
reversionⅢ|紙に銅版画|54×39.5|1975
樹胎告知|紙に銅版画|35×22|1976
樹と顔|紙に銅版画|17×25|1976
巣|紙に銅版画|19.5×26.5|1976
炎帝の詩Ⅰ|紙に銅版画|34.5×52.5|1977
人柱Ⅱ|紙に銅版画|34.5×52.5|1977
人柱Ⅲ|紙に銅版画|35×53|1978
不確実な方位|紙に銅版画|29.5×49.5|1978
乾燥する臓腑|紙に銅版画|19×49.5|1979
犯罪者の肩|紙に銅版画|39.5×54|1979
ユートピアⅠ|紙に銅版画|36×23.5|1979
ユートピアⅡ|紙に銅版画|20.5×35.5|1980
エスキース|紙に銅版画|13×21|1980
クリスタル|紙に銅版画|39.5×25.5|1980
天使の末裔|紙に銅版画|40.5×27.5|1981
囚われた宮殿|紙に銅版画|29.5×42|1981
彼岸への道|紙に銅版画|42×30|1982
窓の断層|紙に銅版画|42×30|1982
トーテム|紙に銅版画|30×42|1982
崩壊と成虫|紙に銅版画|39.5×49.5|1983
照準器|紙に銅版画|30×42|1983
エコロジーヘッド|紙に銅版画|30×21|1985
隙間風|紙に銅版画|30×21|1985
ウルナチュール現象|紙に銅版画|30×42|1986
救国戦線|紙に銅版画|21.5×30|1986
after the city scape Ⅰ|紙に銅版画|26×36.5|1987
星座の話|紙に銅版画|24.5×15.5|1987
内部の出来事|紙に銅版画|53×37.5|1988
定置網|紙に銅版画|37.5×53.5|1988
星の道|紙に銅版画|37.5×53.5|1989
広場|紙に銅版画|30×42|1989
壁の外部|紙に銅版画|53×37.5|1990
ロブスターリブ|紙に銅版画|32.5×42|1990
馬蹄器|紙に銅版画|32.5×42|1990
樹に棲むもの|紙に銅版画|41.5×37.5|1991
負うものたち|紙に銅版画|32.5×42|1991
土|紙に銅版画|37.5×52.5|1992
デラシネ|紙に銅版画|29.5×21.5|1992
冬物語|紙に銅版画|37.5×52.5|1993
ブレザー|紙に銅版画|20×16.5|1993
スカート|紙に銅版画|20×16.5|1993
ベスト|紙に銅版画|16.5×19.5|1993
球転がし|紙に銅版画|37.5×52.5|1994
レモン|紙に銅版画|32.5×42|1994
昆虫鬼 Ⅰ|紙に銅版画|37.5×52.5|1995
昆虫鬼 Ⅳ|紙に銅版画|37.5×52|1995
circusⅠ|紙に銅版画|19.5×16.5|1996
circusⅡ|紙に銅版画|19.5×16.5|1996
circusⅢ|紙に銅版画|19.5×16.5|1996
circusⅣ|紙に銅版画|21×17.5|1996
脱皮の未練|紙に銅版画|36.5×51.5|1997
同行二人|紙に銅版画|37×52.5|1997
連鎖の危険|紙に銅版画|37×52.5|1997
題不明|紙に銅版画|17.5×21|1998
水脈|紙に銅版画|37×52|1998
earth theater|紙に銅版画|29.5×41.5|1999
earth theater|紙に銅版画|42×29.5|1999
earth theater|紙に銅版画|29.5×31.5|1999
earth theater(茸の時間)|紙に銅版画|40×29.5|1999
エチュード|紙に銅版画|30×41.5|1999
earth theater y2-Ⅰ|紙に銅版画|42×60|2000
earth theater y2-Ⅱ|紙に銅版画|42×60|2000
方位N34°34'16"E134°02'20"|紙に銅版画|42×60|2001
方位N34°36'14"E133°56'41"|紙に銅版画|42×60|2001
方位N34°35'39"E134°16'33"|紙に銅版画|42×59.5|2002
方位N34°36'14"E133°56'41"|紙に銅版画|42×59.5|2002
方位|紙に銅版画|42×42|2002
題不明|紙に銅版画|42×59.5|2002
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本記事は、平成20年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行:「天プラ・セレクション」実行委員会
発行日:平成21年3月31日
デザイン:三宅航太郎
印刷:株式会社 みつ印刷
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成20年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2008年7月1日〜2009年3月22日の期間に開催された6人の個展の記録集として発行したものです。
<目次>
金谷雄一 展|自分の中の宇宙40年|天プラ・セレクションVol.14
永岡博 遺作展|銅版画の世界|天プラ・セレクションVol.15
花田洋通 展|浴槽で見る夢08|天プラ・セレクションVol.16
松本恭吾 展|散歩プロジェクト ―FOOTSTEP―|天プラ・セレクションVol.17
三宅航太郎 展|Others|天プラ・セレクションVol.18
宮崎郁子 人形展|エゴン・シーレ ぼくは死を愛し、そして生を愛す|天プラ・セレクションVol.19
カラー22ページ
税込1,000円
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。