焼きものをやっていると「土」のことをとても親しく感じる。毎日ぺたぺたするわけだから当然といえば当然か。だけどその土がすべての始まりで卵で女だということにも気づかされる。僕が扱う磁器土は厳密にいえば「土」じゃなくて石だけど、ここでは組成のことは置いといて。その石ではあるが土、「土」を撫で濡らしあやつり時々ほくそ笑みまたは苦笑いし僕の指との交信を経て命のきっかけのような脆く弱いなにものかが立ち上がる。まだ、在る、だけの。それをやはり大事にそっと柔らかく包み皮膚の皮数枚で感触を確かめながらやがて一人前になる時のための情や姿勢や時に闇を宿らせる。このなんでも吸収する「土」に心を入れようとするわけ。こうなるともう「土」と呼ばず「土さん」にしたほうがいいかな。
ここ4年付き合ってきたピーマン。朽ちてなお美しくいくら見ても飽きることがない。これ自身が命の輝きを放出しているからだろう。その美しさを「土さん」にすり込み宿らせ、命ある「ピーマンさん」が出来上がるのでした。
加藤直樹
加藤直樹は岡山大学特美を卒業後、すぐに自宅に仕事場をつくりそのまま就職することなく陶芸の作家活動を続けている。
学生のころから工芸的なものよりオブジェとしてのやきものの素材に興味を持っていた。卒業制作は「激情の表現」と題したやきものでのインスタレーション展示だった。
しばらくぶりに会うと彼は魅入られたかのように繰り返して磁器でピーマンのオブジェを造っていた。
繰り返すうちにピーマンはしだいに大きくなり、表現方法も変化してきた。陶器に比べて磁器は扱いにくい素材である。大きくしようとすれば途端にロスが多くなる。たくさん造る場合、磁器のやきものでは型を使うのが一般的であるが、彼はあえて型を使わず1点制作にこだわっている。
今回の展示には、昆虫が色絵で細密描写のようにぎっしりと描かれたものも登場してきた。色絵でこれだけ細かい線を描くのは容易なことではない。
ピーマンといい昆虫といい、彼の身近に存在するものであり、手作りにこだわるところに彼の仕事らしさを感じる。
小野山嘉木
(岡山大学大学院教育学研究科教授)
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.32 加藤直樹展 ナオキショウDX
[会期]2010年8月17日〜8月22日
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室
加藤直樹
1979 岡山市に生まれる
2002 岡山大学教育学部特美 卒業
2004 エレキボウイ結成
2006 ピーマンシリーズの制作をはじめる
2009 十河隆史氏のスタジオアシスタントをつとめる
現在 中国デザイン専門学校 講師
個展
2003 春陶(倉敷中央画廊/岡山)
2006 欲求不満(ガレリアプント倉敷/岡山)
2006 食べられません(サンコア/岡山)
2006 赤ピーマンと新渓園(大原美術館新渓園/岡山)
2007 ぴーまんのほろ苦さ (toaru /岡山)
2007 ナオキショウ(サンコア/岡山)
2008 ナオキショウ(toaru/岡山)
2010 ナオキショウ(サンコア/岡山)
2010 天プラ・セレクション vol.32 加藤直樹 陶展―ナオキショウ DX(岡山県天神山文化プラザ/岡山)
主なグループ展
2007 日韓若手陶芸作家交流展(ギャラリーG/広島)
2008 INEDIBLE ART(KEIKO Gallery/ボストン)
出品一覧
タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年
赤いピーマン|磁器、パネル|180×180×10|2010
はじめのはじめ|磁器、磁器土|200×1000×10|2010
ピーマンの死|磁器、糸|270×270×10|2010
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本記事は、平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
編集・発行:岡山県天神山文化プラザ
撮影:戸倉弘一朗
発行日:平成23年3月31日
デザイン:ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office
印刷:株式会社 みつ印刷
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2010年7月6日〜2011年4月3日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。
<目次>
青地 大輔 写真展|犬島時間|天プラ・セレクションVol.29
平井 健三 展|匂い vol.1Wシリーズ|天プラ・セレクションVol.30
柴田 れいこ 展|Sakura さくら|天プラ・セレクションVol.31
加藤 直樹 陶展|ナオキショウDX|天プラ・セレクションVol.32
甲田 千晴 展|廻生する森|天プラ・セレクションVol.33
大月 理恵 展|dream garden|天プラ・セレクションVol.34
池田 理寛 写真展|Afterimage|天プラ・セレクションVol.35
生誕100年記念 大館桂堂 遺墨展|天プラ・セレクションVol.36
カラー30ページ
税込1,000円
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。