2021年11月12日読了時間: 4分

大月理恵展｜dream garden｜天プラ・セレクションVol.34

更新日：4月16日

わたしは指先から様々な表情が生み出されることへの感動を覚え、

自分の表現したい空気感の追求と共に紙という素材での表現に出会いました。

天プラセレクションへの出展では小さな箱に詰めていたわたしの世界観を、1つの大きな空間に表現するという初めての経験をさせていただきました。

それは想像していた何倍も心を揺さぶるものでした。

そして、「またあなたの作品が見たい。」「あなたのような作家が岡山にいて嬉しい。」

こういった声を直接聞かせていただき、人に何かを感じてもらえるという感動を教えていただきました。

今までのわたしの作品は、外に向けたものであってもどこか自己完結していたような気がします。

自分の世界観や表現したい事に向き合えたこの機会に、大好きな岡山で、大切な存在に向けて、これからもわたしの指先で魅力的な作品を生み出して行きたいです。

大月理恵

触れば壊れてしまいそうな繊細な作品である。幻想的な花々は、無論実在するものではない。むしろ「なるべく実在の花に近づかないよう気をつけた」ものである。展示された花の数は 120個あまり、一つの花を制作するのに、2時間程かかるそうだ。膨大且つ繊細な作業を、彼女は黙々と続け、この作品を作り上げた。

もともと彼女の作品は、これほど大きなスペースでの展示を想定してはいなかった。作者の奥ゆかしさ故か、僅かなスペースに、それこそ儚く置かれることを希望していた。そこに私が今回のスペースでの展示を申し入れたのである。作者としては躊躇もあったようだが、自身への挑戦を引き受けてくれた。そして出来上がった空間は、激しく主張するわけではないが、はっきりとした存在感を持って、訪れる人を癒してくれる。そしてもう一つの見所は、天井から吊された作品が落とす影である。この花はただ夢いだけではないと、ゆらゆらと揺れる影が静かに主張する。

この展示が、多くの人に不思議な胎動のようなものを感じさせたことは間違いがない。その多くの人の中には、作者本人も含まれている。暫くは『植物』をモチーフに制作を行うとのこと。とにかく今後が楽しみな作家の一人である。

北山由紀雄

（写真家/天プラ・セレクション推薦委員）