映像という記録メディアを通じて、私の知覚と感性を天神山文化プラザに置いてみました。
展示タイトル「middle way」は「中道」という仏教用語からとられたもので、一方に偏らず中立的な立場を貫くということです。具象と抽象、実写とCG といった、対照的なイメージと技法を重ね合わせ、溶け合うことなく、離れることもない、新たな中道的時空間を表現するという意味で付けました。
今回の展示開始の約2週間前に、テレビのアナログ放送が終わり、要らなくなったブラウン管テレビが山のように捨てられました。私は、アナログ信者ではありませんが、この事に少し寂しさのようなものを感じ、展示物の最初にブラウン管テレビを積み上げてみました。
中道的思考とは、この寂しさのようなものに似て、か細く、揺らめいているモノだと思うのです。
佐藤安
佐藤は、2007年からDJとのコラボによる映像イベント「アブストラクト・シネマ」を開催している。 映像に音を絡めた実験的なシリーズであるが、今回はその流れを汲みつつ、深みや奥行きを持って作品に遍在性を付与させた作品に仕上がっていた。
天神山文化プラザの中で最も広い空間での佐藤安の初個展は、空間を有効に利用したスケールの大きい個展となった。10台のテレビモニターをピラミッド型に組み合わせ、手描きのグラフィックを映し出す演出が、メイン空間へ誘う上で大いに期待させる。縦4m余り・横 20m程の大スクリーンに映し出された具象と抽象、カラフルなグラフィックと海の波の実写画面が音と重なりあって、実像と虚像の曖昧な関係性が距離感を持って交差していく。10分間の短編に纏められた映像がエンドレスで流れる絵画的なスクリーンは、観る者が作品の一部として溶け込んでいくように巨大なイリュージョンの世界へと誘う。「なるべく画面同士が溶けあわないように中道を意識した」という佐藤。ミニマルな映像に変化が加わることで抒情性とドラマ性が加味され、映画の一場面を彷彿させてくれた。
会場を去ろうとした瞬間、訪れた親子連れの子どもたちが佐藤に絵をプレゼントする場面に遭遇した。展示された映像作品を夢中で描いたという子どもの自由快活さが伝わってくる絵だった。初個展を無事に終えた佐藤の将来性を暗示する瞬間に立ち会ったような、印象的な情景であった。
天プラセレクション推薦委員/奈義町現代美術館副館長 岸本和明
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.39 佐藤安 映像展 middle way
[会期]2011年8月9日(火)〜8月14日(日)
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第2展示室
佐藤 安
1981 長野県生まれ、沖縄、神奈川、岐阜、岡山と各地で育つ
2011 倉敷芸術科学大学非常勤講師に就任
近年の主な作家活動
2007 個展「HEAP_30」(infoCurious/東京都麻布)
2009 「ある日の夢」がイメージフォーラムフェスティバルに入選
2010 グループ展「SIGN 展」(公文庫カフェギャラリー/岡山)
2010 岡山市市民芸術祭オープニングイベント映像投影
2010 国民文化祭「文化がまちに出るプロジェクト」夜の映像祭を主催
2010文化庁メディア芸術祭岡山展に映像作品を出品
2011 天プラ・セレクション vol.39「佐藤安映像展 - Middle Way -」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)
2012 個展「Another Middle Way」(公文庫カフェギャラリー/岡山)
出品一覧
タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年
Colorbarz|映像・ブラウン管モニター|34×34×39(10点)|2011
middle way/quiet sea|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2011
middle way/ quiet figure|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2011
middle way/ landing sea|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2011
middle way/ landing figure|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2011
quietness|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2010
intertwist|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2010
reflection|映像・液晶モニター|20.5×30×2.9|2009
middle way|映像・プロジェクター投影|340×1800|2011
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本記事は、平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
編集・発行:岡山県天神山文化プラザ
発行日:平成24年3月31日
撮影・デザイン:池田理寛
印刷:株式会社 三浦印刷所
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2011年6月7日〜2012年3月4日の期間に開催された9人の個展の記録集として発行したものです。
<目次>
役重 佳廣 展|天プラ・セレクションVol.37
島村 敏明 展|Kontrapunkt ~対位法~|天プラ・セレクションVol.38
佐藤 安 映像展|middle way|天プラ・セレクションVol.39
石井 司 展|天プラ・セレクションVol.40
高本 敦基 展|Note:日常性の現場から|天プラ・セレクションVol.41
澤田 虚舟 遺墨展|天プラ・セレクションVol.42
小林 泰子 展|時のない森 |天プラ・セレクションVol.43
関野 倫宏 展|干支もの ETO-MONO 〜初春のお喜びを申し上げます。〜|天プラ・セレクションVol.44
光井 威善 展|天プラ・セレクションVol.45
カラー33ページ
税込1,000円
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。