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長野 剛 展 |天プラ・セレクションVol.49

更新日:4月16日



発端はhoneycomb(蜂の巣)にあります。しばらくの間、何の意識もなく描いていました。しかし、ある時、二次元になったハニカムが六角形となってキャンバスの上に表われました。

そこで気が付きました。hexagon(六角形)は自由なようで不自由な形であることです。しばらくはヘキサゴンの融通のきかないことと、精緻さに気を取られていました。

ある時、「HEXAGONAL(六角形の)」という抽象的な語にしてみて、少し自由になった様な気がしました。それと同時に、何層にも筆を入れて行くことのなかで汽水域の事が頭をよぎります。

真水と海水が混ざる場所。それは私にとって絵具の層が重なる場所、又、色々な想いが混ざり合うキャンバスです。

ヘキサゴナルな埒の内で大海を遠くに見て、汽水域を居場所にして行こうと思います。


長野剛



絵を見ることを通して私たちは何を見ようとしているのだろうか。

作品を見るということは同時に私たちが作品に見つめられているということでもある。


40代半ばにさしかかった長野剛は、20年間にわたり六角形を材料にして精緻な作品を創り続けてきた。会場に配置された作品群は、一見して大きな色見本のようにも見える。

しかし眼を凝らして一枚一枚見ていくと、その画面は連続する無数の六角形で埋め尽くされている。その六角形の一辺はほぼ1.0〜1.5cm前後の長さを保ちながら、幅の大小により微妙なずれを画面に生じさせている。さらに面相筆の緻密な筆づかいによる抑えた色相や明度、彩度のグラディエーションの流れが色面の拡がりと奥行きを感じさせる。

オプティカルな効果によって私たちの眼は幻惑され、一瞬船酔いのような身体的影響を受ける。しかしそれは甘美でこころよい。


彼によって描かれた作品からは、私たちが見知っている六角形ではなく、私たちが知らなかった六角形に似たものの存在が提示されたといえないだろうか。どの作品も静かで禁欲的にみえるが、制作現場での長野剛の面相筆との交感による身体の燃焼度は高い。

そこから生成される―HEXAGONAL(六角形の)―の作品世界がさらなる深化を遂げていくことを祈りたい。

天プラセレクション推薦委員 / 版画家 髙原 洋一


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.49 長野剛展

[会期]2012年9月25日〜9月30日

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室


長野 剛

1968 岡山市生まれ(現在 奈良県在住)

1987 岡山県立岡山一宮高校 卒業

1992 名古屋芸術大学絵画科 卒業

1988-1993 扶搖画廊にてグループ展(岡山市表町)

1991 K109展 (ラブコレクションギャラリー/名古屋)

1994 扶揺画廊にて個展 以後毎年(岡山市表町)

1998 集樹展出品 以後毎年(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

2006 第10回筆あそび大賞展 筆跡賞受賞(筆の里工房/広島県熊野)

2007 「アート・プログラム in 岡山市民病院 vol.2」(岡山)

2012 出会いのシミ展 〜ある男との出会いから〜(京都藝際交流協会JARFO/京都)

2012 天プラ・セレクション vol.49 「長野剛展」(岡山県天神山文化プラザ/岡山市)


出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ|制作年

HEXAGONAL2010 #5|キャンバス/油彩|53×53cm|2010

HEXAGONAL2010 #6|キャンバス/油彩|53×53cm|2010

HEXAGONAL2009 #5|キャンバス/油彩|53×53cm|2009

HEXAGONAL2009 #6|キャンバス/油彩|53×53cm|2009

HEXAGONAL2010 #1|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2010

HEXAGONAL2000 #4|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2000

HEXAGONAL2006 #2|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2006

HEXAGONAL2011 #1|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2011

HEXAGONAL2012 #1|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2011 #2|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2011

HEXAGONAL2012 #2|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2012 #3|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2012 #4|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2006 #1|パネルに綿布/油彩|162×162cm|2006

HEXAGONAL2009 #1|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2009

HEXAGONAL2009 #2|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2009

HEXAGONAL2000 #1|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2000

HEXAGONAL2000 #3|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2000

HEXAGONAL2005 #1|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2005

HEXAGONAL2005 #2|パネルに綿布/油彩|91.2×91.2cm|2005

HEXAGONAL2011 #3|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2011

HEXAGONAL2012 #5|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2008 #1|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2008

HEXAGONAL2007 #1|パネルに綿布/油彩|162×162cm|2007

HEXAGONAL2006 #3|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2006

HEXAGONAL2011 #4|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2011

HEXAGONAL2012 #6|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2012

HEXAGONAL2002 #4|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2002

HEXAGONAL2003 #1|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2003

HEXAGONAL2003 #2|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2003

HEXAGONAL2007 #2|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2007

HEXAGONAL2007 #3|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2007

HEXAGONAL2007 #4|キャンバス/油彩|80.3×80.3cm|2007

HEXAGONAL1996 #1|キャンバス/油彩|72.7×72.7cm|1996

HEXAGONAL1996 #2|キャンバス/油彩|72.7×72.7cm|1996

HEXAGONAL2002 #3|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2002

HEXAGONAL2002 #2|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2002

HEXAGONAL2000 #2|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2000

HEXAGONAL2002 #1|キャンバス/油彩|91.2×91.2cm|2002


以上、作家蔵


 

サイト訪問者からの連絡受付

事務局経由で受け付ける




 

本記事は、平成24年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成25年3月31日

編集:髙原洋一(岡山県天神山文化プラザ企画委員)

   福田淳子(岡山県天神山文化プラザ学芸員)

デザイン:鳥越眞生也(鳥越屋)

撮影:加賀雅俊(べあもん)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成24年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2012年7月31日〜2013年1月13日の期間に開催された5人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 宗友 実乃里 展|存在の証明|天プラ・セレクションVol.46

  • 光延 由香利 展|山が在ること|天プラ・セレクションVol.47

  • 三浦 和 展|Mix up|天プラ・セレクションVol.48

  • 長野 剛 展|天プラ・セレクションVol.49

  • 【特別展】曽我英丘の世界|星宿の空間 書の造形|天プラ・セレクションVol.50


カラー33ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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