天神山文化プラザ、記憶が曖味ですが高校美術展の様な催しで展示した記憶が有ります。それが確かなら凡そ30年ぶりとなります。東京から地元に戻って12年経ちますが、存在すら忘れて打ち合わせの為に訪れた際に懐かしさがあったのはその所為かもしれません。よくぞ残っていてくれました。このような展示スペースが今尚残っている事に感謝しなければなりません。地元の展示空間はどんどん減少し、カフェ併設のギャラリーくらいしかない、お粗末な状況になっています。いや、それはむしろ時代がそう求めているのかもしれません。展示空間は既存のギャラリー画廊スペースではなく、なにか新しい空間を求めている、と。日本画では「アニメ・漫画」が浸透し、もはやファインアートはマイノリティなのでしょう?
ん、昔からですか。地方の美術館の於かれている状況は知ってますよ、でもね隣ではムーミンで大盛況、そりゃ人数入るでしょうけど、それで良いの?エヴァンゲリオン展やって史上最高来館数だと喜んで良いの?だとすれば我々美術作家は美術館・博物館に求めるモノは何も無いでしょう。微力ながら展示させていただいて展示発表のあり方や質など指し示せたのではないかと自分で云うのもナンですが思っています。これから時代がどう移り行くか分からない世ですがセレクションが続くことを願っています。止めるのは簡単ですよ、続ける事は「力」も「お金」も「情熱」も「人」も、いるんです。
三宅 良史
三宅にとって「日本画」とは、どのような存在なのか?
会場で三宅自身によって制作・配布されていた「MIYAKE YOSHIFUMI artworks guide」という小冊子をあえて手にとり、さらにことさら小さな文字で詰め込まれたあの文章を読み、向き合った方なら、いくらかでもその手がかりを得られたのかもわからない。また、世に溢れる「日本画」をイメージする時、半ばミスマッチと思われる言葉の組み合わせ、「日本画×インスタレーション」という今回のタイトルからなんらかのヒントを受け取ることは可能だろう。三宅の制作において「言葉」の果たす役割は大きい。
問題意識を持ち、制作・発表を通して社会、もしくは他者に何かを問う姿勢は、今を生きる創作者として当然の姿に違いない。また作品を通して何が問われているのか、作者が何を発しているのかを見て取ろう、感じようと試みるのは、今度は観者の姿となる。ただしこの観者の姿は、あくまで一つのそれであって全てではない。難しいことを言わず、考えず、ただ見るだけ、そして会場に足を運ぶだけという関わり方もあるのだ。あえて言うならその関わり方は、その場で生まれ作られる。
三宅自身が描くこと、そして空間、場を創り出し、こうして他者と関わる行為によって何を見出すのか?また今回、見出したのか? 答えは、必要ないのかもわからない…が、まだ見ぬ誰かの灯りにはなったのではないか。「日本画」は、一つではない。
天プラ・セレクション推薦委員
美術家 森山 知己
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.65 三宅良史展 日本画×インスタレーション
[会期]2015年3月24日(火)〜29日(日)
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3・4展示室
三宅 良史
1968 岡山市神田町(現・北区)生まれ
1994 東京藝術大学 美術学部絵画科日本画専攻 卒業
1996 東京藝術大学大学院 美術研究科(専攻 日本画)修士課程 修了
1999 東京藝術大学大学院 美術研究科後期博士課程(専攻 日本画)単位取得 満期退学
東京藝術大学美術学部日本画研究室 非常勤助手[〜2003迄]
現在 岡山市在住 無所属
個展
1999 博士課程研究発表展(東京藝術大学 陳列館/上野・東京)
2000 proto-types(ぎゃらりい明/銀座・東京)
2001 柔らかな見立て(東京藝術大学 正木記念館/上野・東京)
2002 Slits and Stripes(ガレリアグラフィカ bis/銀座・東京)
2005 preview+3(すろおが463/岡山市)
2009 Exhibit at yumikobo(遊美工房/玉島・倉敷市)
2013 Exhibition 小品展(アート・ガーデン/岡山市)
2015 天プラ・セレクションVol.65 「三宅良史展 日本画×インスタレーション」(岡山県天神山文化プラザ)
パブリックコレクション
東京藝術大学(修了制作買上、博士資料買上)、台東区、帝京大学、平野美術館
出品一覧
タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm)|制作年 使者|細川紙(楮紙)、岩絵具、膠、金箔、金泥、引手、襖/襖2枚組|184×167.5|2013
冬の散歩道|細川紙(楮紙)、岩絵具、膠、蜜蝋、木枠/枠3枚組|291×173.5|2013
解夏/Summer Rest|細川紙(楮紙)、水干絵具、岩絵具、金箔、膠、木枠/枠3枚組|291×173.5|2014
Perfect Blue|薄美濃紙、藍、膠、木枠/枠3枚組|291×173.5|2014
Inner Garden|白麻紙、岩絵具、銀泥、金箔、革紐、膠、木枠/枠2枚組|186×154|2001- 2014
吉井川|襖、白麻紙、岩絵具、銀箔、膠/襖4枚組|344×175|1998-2014
反射率|楮紙、染料(ウコン・丁字・矢車・タンガラ)、蜜蝋、木枠、LED/枠3枚|291×173.5|2015
Lotus|インスタレーション|2014
Pod|薄美濃紙、蜜蝋、LED・調光器、蓮種/9個|52×52×11
3尺巾掛け軸|絹本彩色/1対
持蓮菩薩|古色彩色、金箔/1体
般若心経板 |杉板、膠、岩絵具、柿渋/47枚|10 cm巾
舟|杉板、蓮種400粒、漆/1艘|190×40×40
掛け軸
Winter Road|絹本彩色|2013
Throw down the sword|絹本彩色|2014
Rolling Thunder|絹本彩色|2014
in the Rain|絹本彩色|2013
Jungle Gardenia|絹本彩色|2013
板絵
秋舟|杉板、岩絵具、膠、金箔|72×72|2013
帰路|杉板、岩絵具、膠、金箔|45×90×1|2013
西ヨリの使者|板、岩絵具、膠、金箔|89×87|2012
harbour|板、岩絵具、膠、銀箔|89×87|2009
Geta|杉板、岩絵具、膠|72×20.4×0.7|2013
星フル夜|杉板、岩絵具、膠、金属泥|60.5×47|2009
林ノ中ニテ|杉板、岩絵具、膠、金属泥|60.5×47|2014
参考デッサン・スケッチ、小下図、参考文献資料8冊
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本記事は、平成26年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.65 三宅良史展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行:岡山県天神山文化プラザ
発行日:平成27年3月31日
印刷:株式会社 三浦印刷所
編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]
デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]
撮影:加賀雅俊[べあもん]
照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成26年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2014年4月15日〜2015年3月29日の期間に開催された7人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。
<目次>
藤原裕策展|ゴルゴダ ―展翅のささやき―|天プラ・セレクションVol.59
加藤晋平 写真展|家族のカタチ2|天プラ・セレクションVol.60
胡桃澤千晶展|かげろうエレジー|天プラ・セレクションVol.61
真部剛一展|虚実皮膜|天プラ・セレクションVol.62
宮崎政史展|天プラ・セレクションVol.63
片山康之展|完成形の可塑性能|天プラ・セレクションVol.64
三宅良史展|日本画×インスタレーション|天プラ・セレクションVol.65
カラー60ページ
税込1,000円
※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。