目に見えるものだけが真実ではない。
見えている部分はわずかで、
水面下には何倍にも及ぶ巨大な氷塊が沈んでいる。
感情の爆発も、
地球温暖化の影響も、
じわりじわりとやってくる。
ある日、
積み重なったものが突如に崩れる。
雪崩のように。
吉行 鮎子
吉行さんの絵を初めて見たのは市内の喫茶店公文庫カフェだった。
ヤシが茂る密林の楽園。食事したり、楽器を奏でたりする人たち。そこには熊や猿、時にはライオンもいた。
この絵の中に作者も一緒にいるんだな、できれば私も仲間にいれてほしいと思った。
それから1年後、出石町のギャラリー油亀で吉行さんの個展が開かれた。作者はまだ少女のような26歳の女性だった。毎日新聞に月1回連載の私のコラム「おかやまアート事情」に「素朴派の新星画家吉行鮎子さん」と題して紹介した。
素朴派とは正規の美術教育や理論とは無縁に、心の衝動に従って絵を書く人たちをいう。その代表格、税関吏のルソーはパリの植物園に通ってはメキシコのような密林の楽園を描いた。いつしか彼は自分が本当にメキシコに行ったと思うようになった。
吉行さんの描く密林や草原、氷原…。彼女は確かにそこに棲んでいるのだと思う。自分の体がそのまま緑の草原や砂漠になってしまうのだから。
天プラ・セレクションの「エモーションが止まらない」では涙を流す彼女がいた。温暖化や大気汚染で氷原が雪崩を起こしたり、動物がだんだんと棲みにくくなる地球。
それでも吉行鮎子は白い雲のように飛んで行く。魚夫人の弾くピアノに合わせて、くまさんと抱き合って踊りつづける。
美術ジャーナリスト
柳生尚志
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.68 吉行鮎子展 エモーションが止まらない
[会期]2015年11月24日(火)〜29日(日)
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室
吉行 鮎子
1986 岡山市生まれ
2009 沖縄県立芸術大学 卒業
現在岡山市在住
個展
2011 「不思議の国のあなた」(公文庫カフェ/岡山)
2012 「瞑想トラベル」(アートスペース油亀/岡山)
2013 「箱男の頭の中」(公文庫カフェ/岡山)
2014 「疲れたら休めばいい」(アートスペース油亀/岡山)
2015 天プラ・セレクションVol.68「吉行鮎子展 エモーションが止まらない」(岡山県天神山文化プラザ)
グループ展
2012 「X'mas in SARASA」(Art Box SARASA/岡山)
賞歴
2009 世界絵画大賞展 優秀賞
2009 全日本アートサロン絵画大賞展自由表現部門 大賞
2010 世界絵画大賞展 大賞
2010 シェル美術賞 入選
出品一覧
タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm)|制作年 Hello!|キャンバスに油彩|53×53|2014
Ahhhhh!!|キャンバスに油彩 |53×53|2014
ハーイ!|キャンバスに油彩|53×53|2014
極北さん|キャンバスに油彩|53×53|2014
DANCING くまさん|キャンバスに油彩|53×53|2014
昼食待ち|キャンバスに油彩|53×53|2015
ヤァァァァ!!|キャンバスに油彩|53×53|2014
ハローグッバイ|キャンバスに油彩|53×53|2015
You Better Run|キャンバスに油彩|53×53|2015
今を蹴って|キャンバスに油彩|53×53|2015
雪崩スローモーション|キャンバスに油彩|162×162|2014
It's cool!!|キャンバスに油彩|162×162|2014
平常心、大崩落!|キャンバスに油彩|162×162|2014
とろける太陽、氷山の一角|キャンバスに油彩|45.5×38|2014
こんなに自由なのに|キャンバスに油彩|162×162|2014
渇望|キャンバスに油彩|145.5×112|2014
芝生に包まれ、抱きとめられ、閉じ込められている|キャンバスに油彩|145.5×145.5|2012
雲が流れていく|キャンバスに油彩|72.7×60.6|2015
浮遊する平常心|キャンバスに油彩|72.7× 60.6|2015
自由そのもの|キャンバスに油彩|162×162|2014
育てる|キャンバスに油彩|91x72.7|2015
自然を浴びる|キャンバスに油彩|91×72.7|2015
SESSION|キャンバスに油彩|116.7×116.7|2015
SESSION|キャンバスに油彩|116.7×116.7|2015
いきものたちはどこにいくのか?|キャンバスに油彩|116.7×116.7|2015
エモーションが止まらない|キャンバスに油彩|100×100|2015
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本記事は、平成27年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.68 吉行鮎子展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行:岡山県天神山文化プラザ
発行日:平成28年1月31日
印刷:株式会社 三浦印刷所
編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]
デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]
撮影:加賀雅俊[べあもん]
照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成27年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2015年8月4日〜2016年2月7日の期間に開催された6人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。
<目次>
カスパー・シュワーベ展|ars geometrica|天プラ・セレクションVol.66
丸山智代展|私の秘密の住人たち|天プラ・セレクションVol.67
吉行鮎子展|エモーションが止まらない|天プラ・セレクションVol.68
細見博子展|蝿女|天プラ・セレクションVol.69
山本哲也展|袖は襟で襟はなくないものはある|天プラ・セレクションVol.70
島田悠美子展|増殖する記憶 ―目に見えない生命のかたち―|天プラ・セレクションVol.71
カラー52ページ
税込1,000円
※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。